“ナベサダ”こと渡辺貞夫はJ-ジャズの枠を越えた,世界のジャズ・ジャイアントの一人である。
…と,紹介しようとも,読者の皆さんに渡辺貞夫の“偉大さ”はストレートに伝わらないのではないか?
管理人がそうだった。渡辺貞夫と来れば草刈政雄と豪快に笑う「ブラバス」のCM。どこにでもいそうな“気のいいおっさん”でしかなかった。
しかしあるCDとの出会いにより,それまで“色眼鏡”でナベサダを見ていたことを心から悔いた。CDから聴こえてきたのは“パーカー派”のアドリブ,インプロヴィゼーション。フレーズの節々にチャーリー・パーカーをカバーしてきた面影が色濃く残っていたのだ。
そんな“パーカー派”としての渡辺貞夫との出会いが『PARKER’S MOOD』(以下『パーカーズ・ムード』)だった。
この時期の渡辺貞夫は「ナベサダ・フュージョン」の大連発。フュージョンのナベサダが大好きだったので,当時高校生だった管理人にはきつかったが発売されるアルバムは全部買っていた。
『パーカーズ・ムード』もその流れで買ったものだったが,いつもとは違う空気感に心を“鷲づかみ”されてしまった。「もう元には戻れない」と感じてしまう何かが…。
そう。脱フュージョン+ジャズへの目覚め! 管理人のジャズ好きは,ズバリ『パーカーズ・ムード』から始まった!
これぞ,俗に言う「パーカー・ショック」なのだろうが,管理人の場合は「パーカー・ショック」ではなく「ナベサダ・ショック」!
『パーカーズ・ムード』は“蜜月関係”資生堂提供「BRAVAS CLUB」のライブ盤。渡辺貞夫が目と鼻の先にいる聴衆に全力でぶつかっていく。
そんなストレートなジャズ・スタイルであるからこそ『パーカーズ・ムード』には,他のナベサダ・フュージョンでは聴くことができない“命がけのアドリブ”が持つ圧倒的な存在感がある。「命を削る」演奏が『パーカーズ・ムード』の中にはある。
実は冒頭に述べた経験をしたのは,正確には数年後のこと。渡辺貞夫を追いかけてチャーリー・パーカーと出会い,そのチャーリー・パーカーとの出会いからアドリブのイロハを学ぶことができた。
一皮一皮脱皮し,ジャズ好きとして成長するにつれ『パーカーズ・ムード』から“パーカー派”の渡辺貞夫を聴き取れるようになった。
相当練習したんだろうなぁ。渡辺貞夫が子供の頃は,王,長嶋ではなく,チャーリー・パーカーが“ヒーロー”だったんだろうなぁ。
アルト・サックスをキラキラと輝く瞳で見つめている貞夫少年の姿を想像すると,知り合いでもないのに今夜も目頭が熱くなってしまう。
あ~あっ。やっぱり読者の皆さんに渡辺貞夫の“偉大さ”を伝えることはできなかった。是非『パーカーズ・ムード』を聴いていただきたい。言葉で伝えられるのは,ただそれっぽっち…。
01. STELLA BY STARLIGHT
02. EVERYTHING HAPPENS TO ME
03. LAMENT
04. BILL’S BOUNCE
05. I THOUGHT ABOUT YOU
06. PARKER’S MOOD
07. BIRD OF PARADISE
08. BEAUTIFUL LOVE
SADAO WATANABE : Alto Saxophone
JAMES WILLIAMS : Piano
CHARNETT MOFFETT : Bass
JEFF WATTS : Drums
買い直し理由:リマスター
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