アントニオ・ファラオ / ソーン~イタリアン・インパルス

5.0

THORN-1 
アントニオ・ファラオの紹介として,やれ,ヨーロッパ出身のジャズ・ピアニストであるとか,イタリアでは早くも「皇帝」と呼ばれているとか,そのような枕詞を使った紹介の仕方は失礼だと思う。

 『THORN』(以下『ソーン~イタリアン・インパルス』)を聴いてきただければ分かるが,アントニオ・ファラオは,すでにイタリアとかヨーロッパとかの括りを超えて,本場アメリカ,つまり世界レベルでも「指折りのジャズ・ピアニスト」として知られているのも納得の出来だからである。
 例えば,アントニオ・ファラオと同世代で同じイタリア出身で,すでにワールド・クラスなステファノ・ボラーニを,イタリアのとかヨーロッパのとか枕詞を付けて紹介するのは失礼でしょう?

 『ソーン~イタリアン・インパルス』の共演者は,サックスに,あのクリス・ポッターベースに,あのドリュー・グレスドラムに,あのジャック・デジョネットである。
 しかし一番重要なのは『ソーン~イタリアン・インパルス』は,クリス・ポッターでも,ドリュー・グレスでも,ジャック・デジョネットでもなく,完全にアントニオ・ファラオのアルバムになっている事実!
 それ位に『ソーン~イタリアン・インパルス』の濃密な出来に驚いた。というのも管理人の『ソーン~イタリアン・インパルス』の初体験は,福岡市内のジャズ喫茶ADAMS」での「ながら聞き」だったのだから…。

 『ソーン~イタリアン・インパルス』のドラムジャック・デジョネットであることはほぼ確定,サックスクリス・ポッターだと予想した。この両者については大正解。問題はピアニストである。
 『ソーン~イタリアン・インパルス』のピアノにはジャック・デジョネットに負けないパワーがあった。『ソーン~イタリアン・インパルス』のピアノにはクリス・ポッターに負けないテクニックがあった。

 それにもまして音楽性であった。その磨き抜かれた技量に立脚してモダンジャズ・ピアノの普遍的な魅力を身に纏っている。このピアニストは只者ものではない。
 ビッグネームの誰かだと確信しつつ,手に取ったクレジット欄にはアントニオ・ファラオ。初めて目にするアントニオ・ファラオの名前を忘れないようメモに書き,帰宅してすぐにアマゾンでポチッとした。

 「皇帝」アントニオ・ファラオのスタイルとはモダンジャズ・ピアノの「王道」である。思うにアントニオ・ファラオの考えでは,自らの個性を追い求めるではなく,もっと広い視野で,モダンジャズ・ピアノの究極の表現を探求するスタンスに近い。
 だ・か・ら・超大物共演者3人と相まみれても,気後れすることなく真正面からブツかっていける。アントニオ・ファラオの指先には,歴代のモダンジャズピアニストの“魂”が乗っかっている。それ位に自信に満ちたフレージングが響いている。
← 特に1曲目【ソーン】と3曲目【プレリュード】が大好きすぎるくらいに好きなのだが,8曲【プレリュード】の2分32秒から6分11秒までのロングなアドリブが超強烈で窒息死してしまいそう。全ジャズ・ピアノ・ファン必聴のインプロヴィゼーション

THORN-2 ライナーノーツに書かれていたが,あのケニー・カークランドブランフォード・マルサリスとのステージを都合でキャンセルした場合に,自らの代役としてアントニオ・ファラオを指名していたそうである。
 ケニー・カークランドに惚れ込まれ,ブランフォード・マルサリスジェフ・ワッツに認められたアントニオ・ファラオの「王道」が実に素晴らしいと思う。

 アントニオ・ファラオは,もはやイタリアのジャズとかヨーロッパのジャズ,という言葉で紹介されるピアニストではない。そうではなく雰囲気としては,最高にゴキゲンな“アメリカン・ピアニスト”だと思う。逆にイタリアっぽさなど微塵も感じない管理人がおかしいのだろうか?

 ピアニストとしても超一流。リーダーとしても超一流。ちょい昔のハービーハンコックマルグリュー・ミラーだとか,先に挙げたケニー・カークランドマーカス・ロバーツだとか,アントニオ・ファラオには「ジャズ・ピアニストが惚れ込むジャズ・ピアニスト」の資質がある。
 近い将来,アントニオ・ファラオが世界のTOPを獲ると思う。アントニオ・ファラオの時代がすぐそこまで来ている。

 
01. THORN
02. TIME BACK
03. PRELUDIO
04. EPOCHE
05. CARAVAN
06. ARABESCO
07. B.E.
08. TANDEM
09. MALINCONIE

 
ANTONIO FARAO : Piano
CHRIS POTTER : Tenor Saxophone, Soprano Saxophone
DREW GRESS : Bass
JACK DeJOHNETTE : Drums

(エンヤ/ENJA 2000年発売/TKCB-71997)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)
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