テレンス・ブランチャード / フロー

4.5

FLOW-1 テレンス・ブランチャードの名前を聞けば,真っ先に「ウイントン・マルサリスのライバル」という言葉が浮かんでくる。
 テレンス・ブランチャードウイントン・マルサリスは,年齢が1つ違いでニューオリンズ出身の幼馴じみ。ウイントン・マルサリスの名を世界に広めたアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズウイントン・マルサリスの後釜として加入したのもテレンス・ブランチャード。そりょそうなるわなぁ。
 仲良しだけど“神童”ウイントン・マルサリスには絶対に勝てっこないのだから,テレンス・ブランチャードの方がスタイルを変えてもしょうがない,と擁護したい。

 テレンス・ブランチャードの新しい土俵がスパイク・リーのサウンドトラックの“お抱えジャズメン”である。こちらもブランフォード・マルサリスとの繋がりから始まったコラボレーションなのだから,映画音楽というカテゴリー以外に,さしてウイントン・マルサリスとの違いは感じなかった。
 サウンドトラックなのだから,テレンス・ブランチャードアドリブが映画のストーリーに合わせたものにしかならない不満は別として,演奏自体はジャズ・アルバムとして通用する内容が続いていたので,今までとは別の土俵に上がったくらいのものとして「ウイントン・マルサリスのライバル」テレンス・ブランチャードジャズトランペットを聴き続けてきた。

 そんな映画音楽に軸足を移しながらも,根っ子にはジャズがちゃんとあり続けたテレンス・ブランチャードに「最近めっきり変わったよなぁ」と思うようになったのは最近のことである。
 テレンス・ブランチャードが,根っ子の部分だけではなく,再び真正面からジャズに向き合い始めた頃のサウンドの変化に,どこかマイルス・デイビス的なものを感じるようになった。

 『FLOW』(以下『フロー』)もそんなアルバムである。管理人は『フロー』のテレンス・ブランチャードに,ウイントン・マルサリスとは異なるマイルス・デイビスの影響が感じられる。

 『フロー』の録音メンバーは,トランペットテレンス・ブランチャードサックスブライス・ウィンストンギターリオネル・ルイケピアノアーロン・パークスベースデリク・ホッジドラムケンドリック・スコットの,通称「ブルーノート・ヤング・ライオンズ」の面々たち。

 全員名前は知っている。全員の演奏も1度や2度は聴いたことがある。この中で売れていると言えるのはギターリオネル・ルイケぐらいであろう。「ブルーノート・ヤング・ライオンズ」は全員が“これからの人”である。
 にも関わらず『フロー』からは超一流の演奏だけが鳴っている。鳴り響いては管理人の心臓を直撃してくる。いや~,本当に凄い。管理人なんかは感覚が新しすぎて,ただ驚いているだけである。恐らくは数年後には全員揃って「売れに売れまくっている」と予想する。まっ,テレンス・ブランチャードが後見人なのですから~。

FLOW-2 次に『フロー』の楽曲である。既に映画音楽の作曲と編曲において世界を制したテレンス・ブランチャードのリーダー・アルバムだというのに,テレンス・ブランチャードオリジナルは単独名義は1曲のみ。共作が3曲の全4曲。残る7曲は「ブルーノート・ヤング・ライオンズ」のオリジナルである。この手法に管理人はピント来た!

 これはマイルス・デイビスの手法である。若手の実力派を自分の元に集めては,円熟した自分では絶対に書けない最先端の楽曲を書かせ,それを自分好みに演奏させる。そうすることで自分の音楽を薫陶していったマイルス・デイビスの手法なのである。
 【FLOW,PART Ⅰ】【FLOW,PART Ⅱ】【FLOW,PART Ⅲ】は編集の切り貼りのようなコラージュであるが,この雰囲気もテオ・マセオっぽい?

 テレンス・ブランチャードによる編集作業はなかったにしても『フロー』には「テレンス・ブランチャードが欲する音」と「理想のテレンス・ブランチャードの音」がいっぱい詰まっている。

 
01. Flow, Part I
02. Wadagbe (Intro)
03. Wadagbe
04. Benny’s Tune
05. Wandering Wonder
06. Flow, Part II
07. The Source
08. Over There
09. Child’s Play
10. Flow, Part III
11. Harvesting Dance

 
TERENCE BLANCHARD : Trumpet, Synth Programming
BRICE WINSTON : Soprano Saxophone, Tenor Saxophone, YAMAHA WX5
LIONEL LOUEKE : Guitar
AARON PARKS : Piano
HERBIE HANCOCK : Piano
DERRICK HODGE : Bass
KENDRICK SCOTT : Drums
HOWARD DROSSIN : Synth Programming
GRETCHEN PARLATO : Vocals

(ブルーノート/BLUE NOTE 2005年発売/TOCJ-66260)
(ライナーノーツ/都並清史)
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