ゲイリー・バートン / ゲイリー・バートン&キース・ジャレット

4.5

GARY BURTON & KEITH JARRETT-1 2007年の一発目の記事は何にしようか? そのように2006年の年末から迷っていたが「アドリブログ」のルーティーンとしては,昨年そうしたように,毎年「キース・ジャレット批評」でスタートするのがふさわしいと考えた。
 「1アーティスト1枚」のルールで執筆してきたが,新年一発目だけは,自分の一番好きなジャズメンを取り上げるのが自然であろう。そいうことで2006年はソロだったので,2007年はデュオ,来年2008年はトリオ,そしてアメリカン・カルテットヨーロピアン・カルテット,その後には『スピリッツ』のような異色作の順番で新年を迎えたいと(現時点では)思っている。

 「キース・ジャレット批評」が「アドリブログ」の読者の皆さんへの「お年玉」となれますように…。

 そういうことで2007年はキース・ジャレットデュオの年なのだが,キース・ジャレットデュオと来れば,恐らくはジャック・デジョネットとのデュオルータ・アンド・ダイチャ』の名前が真っ先に挙がるはずである。

 『ルータ・アンド・ダイチャ』は超の付く名盤なので幾らでも感想は書けるのだが,今後の執筆予定を考えるとジャック・デジョネットとのお付き合いは長い。それで今年はパスすることに~。
 でもって,代わりに管理人が選んだのがゲイリー・バートンとのデュオとなる『GARY BURTON & KEITH JARRETT』(以下『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』)。

 ゲイリー・バートンとのデュオといっても正確にはデュオではなく,ギターサム・ブラウンベーススティーヴ・スワロードラムビル・グッドウィンが在籍するゲイリー・バートンのレギュラー・バンドのゲスト・プレイヤーとしての共演なのだが,そこをデュオと書かせる辺りが,キース・ジャレットの「大物」の証し!

 さて,ゲイリー・バートンキース・ジャレット名義の『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』)が1971年。チック・コリアゲイリー・バートン名義の『クリスタル・サイレンス』が1973年。
 そう。1973年の時点では名前がゲイリー・バートンより先に出ているチック・コリアの方がキース・ジャレットより格上であった。『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』と『クリスタル・サイレンス』を聴き比べてみると,チック・コリア優位,は明白である。

 そう。キース・ジャレット命の管理人をして,若き日のキース・ジャレットには現在でも愛聴に値する演奏は多くはない。『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』もそれなりの(普通の出来の)演奏集である。

 『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』レコーディング当時のキース・ジャレットの活動は,かの「電化マイルス」のバンドに在籍しつつ,チャーリー・ヘイデンポール・モチアンと組んだピアノ・トリオで,ロックやカントリーやアメリカン・ポップスを上手に消化した「ジャズ・ロック」期に当たる。

 つまりゲイリー・バートンとしては,既に出来上がっていたバンド・サウンドに意気投合できるピアニストを迎えて音を分厚くしたかっただけ,マイルス・バンドのキース・ジャレットのお手並みを拝見してみたかっただけ,だったように思えてならない。完全にゲイリー・バートンの“興味本位”というのがキース・ジャレットとの共演理由で間違いない。

 キース・ジャレット側も同様であって,キース・ジャレットギタリストと共演したアルバムはマイルス・バンド以外では『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』のみである。こらはギターとの共演に面白さを感じなかったということか?
 惜しむべきは,仮に『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』のギタリストサム・ブラウンではなくパット・メセニーであったなら,キース・ジャレットギタリストとの共演アルバムが増えたように思うのだが…。

GARY BURTON & KEITH JARRETT-2 そんな“興味本位”のレコーディングにも関わらず,この点がゲイリー・バートンの本当の凄さなのだと思うのだが,一度の音合わせをしただけで,まだ駆け出しのキース・ジャレットの才能を見抜いてしまった。
 特にコンポーザーとしてのキース・ジャレットの才能を見定めてしまった。『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』で全5曲中4曲もキース・ジャレットオリジナルを採用している。ゲイリー・バートン自身も名曲を数多く書き上げてきたソングライターだというのに…。

 ズバリ『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』の真実とは『ゲイリー・バートン・フィーチャリング・キース・ジャレット』である。
 ゲイリー・バートンキース・ジャレットに「花を持たせた」アルバムなのである。その後のキース・ジャレットの“花道街道”を祝福するかのように…。

 『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』で,ゲイリー・バートンキース・ジャレットへ託した「裁量権」が,その後のゲイリー・バートン自身の音楽的な成功に影響を及ぼしている。

 それが【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】の誕生である。「モントルー・ジャズ・フェスティバル」での超名演アローン・アット・ラスト』はキース・ジャレットとの共演なしには実現しなかったと思うし【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】の演奏なしにはグラミー受賞はなかったと思っている。

 ゲイリー・バートンについて語るなら,パット・メセニーチック・コリア小曽根真との共演歴について語らないわけにはいかないが,個人的にはキース・ジャレットとの出会いについても大々的に語られるべきだと思っている。
 そうなれば,その会話の結論はこうであろう。ゲイリー・バートンの“音楽眼”が最高に素晴らしい! 

 『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』以前のキース・ジャレットの音楽とは,ジャズとは言ってもカントリーでフォークでゴスペルチックでアーシーなノリで突っ走るマイルス・バンドの鍵盤奏者にふさわしい音楽の演奏者であった。
 代名詞となるソロ・ピアノはまだだったし,アメリカン・カルテットヨーロピアン・カルテットスタンダーズ・トリオも当然手付かず。
 『ゲイリー・バートン&キース・ジャレット』以前のキース・ジャレットとは,ゲイリー・バートンよりもチック・コリアよりも格下な若手有望株の1人にすぎなかったという事実。

 管理人は思う。ゲイリー・バートンは“未完成の”キース・ジャレットの中に,一体何を見い出したのだろう。直接,本人に尋ねてみたい…。

 
01. GROW YOUR OWN
02. MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE
03. COMO EN VIETNAM
04. FORTUNE SMILES
05. THE RAVEN SPEAKS

 
GARY BURTON : Vibes
KEITH JARRETT : Piano, Electric Piano, Soprano Saxophone
SAM BROWN : Guitar
STEVE SWALLOW : Bass
BILL GOODWIN : Drums

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1971年発売/AMCY-1124)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)
アドリグをログするブログ “アドリブログ”JAZZ/FUSION

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